富士見市大字鶴馬字八ヶ上

発見日:2021年2月13日

発見場所:富士見市関沢二丁目付近

アパートの木製の表札に書かれていたものだが、かなり読みづらい。別アングルから取ったこの写真のほうがまだ見やすいかも。

全国には「はけ」という言葉が付いた地名が多く存在する。特に埼玉県の武蔵野地域に多く、崖地形を表す方言から来ているらしい。𡋽や岾などの珍しい漢字が当てられることが多いため、稀少地名漢字を調べている人たちの間でも有名である。

以前 Twitter で、古い地理院地図に「八上」に「ハケウエ」とルビが振ってある例があると紹介されていた。その場所がまさに今回の旧地名を発見した富士見市関沢付近である。現在は周辺に八ヶ上公園八ヶ上西緑地公園、八ヶ上東緑地公園があり、公式の読みは不明だがネットでは「やつがうえ」「はけうえ」の両方が出てくる。これも公式の読みかどうかわからないが、八ヶ上遺跡の読みは「はけうえ」となっている。

八ヶ上の読みが「はけうえ」だとすると、もともと「はけ」という音が先にあって、「八ヶ」という字を当てたものと推測される。つまり、八ヶ上も「はけ」地名のバリエーションの一つということである。実際、八ヶ上西緑地公園高台の上に位置しており、いかにも「はけうえ」といった地形である。

ところが登記情報を調べてみると、なんと大字鶴馬にあるのは字八ヶ上ではなく、字ハケ上であることが判明した。八とハはブラウザの環境によっては区別が付きづらいかもしれないが、八は漢字でハはカタカナである。もともとはカタカナのハケだったのが、その地域で使われていくうちに八ヶに置き換わったということだろうか。もう一つの可能性はもともとは字八ヶ上だったのが、登記情報のデジタル化に伴う転記などの際に、ハケ上と誤記されたというものである。古い地理院地図に「八上」と書かれていることを考えると、後者が正しそうだが確証はない。

実はこの字八ヶ上(ハケ上)だが、現三芳町大字藤久保に一部が編入している。その登記情報は「大字藤久保(元鶴馬分)字八ケ上」である。ここで小さい「ヶ」が大きい「ケ」になっているのは現代の主流の表記法で、おそらくは後から変えられたものだろう。元○○分の編入元と編入先で表記が微妙に変わっていることはよくあるのだが、これも「ハケ上」が「八ヶ上」の転記ミスである可能性を示唆している。