戸田市前新田二丁目


発見日:‎2017年3月5日
発見場所:戸田市下前二丁目付近

今回発見した地名であるが、戸田市に前新田という町名が存在したことはない。通称町名かとも思ったが、そのあとに現在の住所と同じ丁目・番・号が書かれているので、住居表示実施後のものであるようだ。

現町名の下前は下戸田前新田から来ているので、誤って前新田と記載してしまったのだろうか。かつては町会名や地域名として下戸田前新田が使われていたようなので、自分の住んでいる地域を前新田と認識していてもおかしくはない。なお、現在は町会名も現町名に合わせて下前町会となっている。

この前新田であるが、元は下戸田村の小字だったのだろうか。Wikipedia の町名一覧には下前二丁目の元の地域は「大字下戸田字新田・字河岸の各一部」とある。一方、下のほうには下前の地名は「大字下戸田字下戸田前新田に由来」とある。同じページの中で矛盾した記述となっているが、誰でも編集可能な Wikipedia では仕方がない。

真相を解き明かすためにいろいろ調べていたらこのページに行き当たった。この記事によると、下戸田には公的な地名である字(小字)のほかに集落名である小名(こな)というのがあったそうだ。そして前新田はその小名だったのである。ちなみに他の小名の例として元蕨というのがある。これは名前のとおり、蕨宿が現在の蕨市にできる前に蕨と呼ばれていた場所だそうだ。現在もこの地域には元蕨町会がある。

このように前新田の地名が古い歴史を持つものであることがわかった。そしてこれは推測というか妄想に近いのだが、住居表示実施に伴い下前の町名が決定される際、前新田という町名も候補に挙がっていたのではないだろうか。そして、下前派と前新田派が激しく争ったあげく、前新田が負けてしまった。それでも納得がいかず、前新田の町名を使っていた住民が当時は結構いたのではないだろうか。

本ブログでは基本的に過誤による表記(町が余計だとか足りないとか、小字が大字扱いされているとか)は取り上げない方針である。しかし今回のケースは単なる誤記とはいえない感じがして、上のような妄想もあって取り上げるに至った次第である。