川越市大字今福字中台
発見日:2017年5月5日
発見場所:川越市むさし野南付近
中台は現在のむさし野南、中台(一〜三丁目)、中台元町、中台南あたりを含む広大な地域の名称である。かつて中台は周辺の町や村の入会地であった。入会地とは一定地域の住民が山林原野などを利用する権利を持つ土地のことである。たとえばここには中台がかつて川越藩志義町の入会地であったことが記されている。
そのため中台は周辺の町村の飛び地となっていた。明治以後、飛び地は整理されていき、多くは大字今福の小字となった。ただし、ただ字中台となったのではなく、
- 大字今福 字中台 元川越分
- 大字今福 字中台 元東明寺分
- 大字今福 字中台 元小久保分
- 大字今福 字中台 元寺井分
のように、元々属していた町村の名前が後ろに付けられた。今回発見した旧地名も「今福中台」と書かれていたが、本来は「大字今福字中台元寺井分」が正しい。
ところで、大字今福には「元〇〇分」と付けられた小字が他にも存在する。以下に列挙すると、
- 大字今福 字武蔵野 元今成分
- 大字今福 字武蔵野 元松郷分
- 大字今福 字武蔵野開 元野田分
- 大字今福 字武蔵野開中台 元谷中分
- 大字今福 字武蔵野今福脇 元大袋分
- 大字今福 字武蔵野第八番ノ内△号 元大仙波新田分 (△には漢数字が入る)
- 大字今福 字下久保 元南大塚分
- 大字今福 字向台 元南大塚分
となる。後ろの二つは別系統と思われるので除外すると、すべて小字に武蔵野が付いている。ちなみに「元〇〇分」が付かない「大字今福字武蔵野」も存在する。これは元から今福村の土地だったのだろう。
そして注目すべきは、上の「字中台〜」と下の「字武蔵野〜」で付けられている元町村名がかぶっていないことである。また、新旧対照図を見ると、「字中台〜」の区域と「字武蔵野〜」の区域はくっきりとは分かれておらず、入り乱れて存在している。ここから推測できるのは、同じ地域をある村は中台と呼び、別の村は武蔵野と呼んだのではないだろうか。厳密には中台より武蔵野のほうが広い範囲を指しているようで、武蔵野の中に中台が含まれる感じだろうか。現在同地域には「今福中台」「今福武蔵野」というバス停があるが、その設置場所と小字名が対応しているようには見えない。
ちなみに今回、同じ旧地名を三か所で見つけているのだが、どれも「今福中台」と表記されており、そのうちの一つは本来は「字武蔵野〜」の区域にあった。住民は今福中台を字名ではなく通称町名のように使っているのかもしれない。
それにしても「字武蔵野第八番ノ内△号元大仙波新田分」はすごい。△には漢数字が入るが、これまでに壱、参、四を確認している。これまでに見た小字名の中では圧倒的に最長である。
さて、飛び地の多くは大字今福の小字となったと書いたが、実は大字今福以外にも「字中台〜」「字武蔵野〜」は存在する。以下に列挙する。
- 大字南大塚 字中台 元川越分
- 大字南大塚 字武蔵野開 元宿粒分
- 大字大塚新田 字中臺 元川越分
- 大字大塚新田 字中臺 元寺井分
- 大字大塚新田 字武蔵野 元今成分
- 大字大塚新田 字武蔵野開 元野田分
- 大字新宿 字中臺 元寺井分
- 大字新宿 字武蔵野 元八ツ嶋分
- 大字新宿 字武蔵野 元松郷分
- 大字大仙波 字武蔵野
- 大字大仙波新田 字武蔵野第八番ノ内二号
- 大字砂新田 字武蔵野 元松郷分
- 大字砂新田 字武蔵野 元大仙波分
中台の表記が旧字体と新字体が混ざっているのが気になるが、おそらく対照図を作ったときに新字体に直し忘れたのだろう。大字砂新田字武蔵野元松郷分、元大仙波分は以前に紹介したものと同じである。